生き延びるためのコロナ講座 その1 long COVID篇

 

 

なにしろ、まず生き延びねばならない。

よく知られているように日本では初期に大規模PCR検査をやれなかったのが、致命的で、いったいどこに、どのくらいの密度でウイルスがあるのか、発生しやすいのか、「鑑(かん)」が養われなかった。

固よりPCR検査は疫学的な観点から重要とみなされて世界中の国が全力をあげて、幸いなことに、韓国のひとびとが具体的な方法を確立したドライブスルーという劃期を経て、十分な基礎資料として蓄積されていったが、本来、言わば全体主義的な「個人の事情なんて、わたしは知りません」な疫学という学問の性格から離れたところで、発達したマスメディアとインターネットのおかげで、情報は個々人にまで行き渡って、逆ベクトルで個人が生き延びる武器としても有用になった。

ところが日本は社会として、現実を考えぬく能力を欠いて、大好きな屁理屈合戦を始めてしまって、PCR検査の時機を失してしまったが、やれなかったものは仕方がない。

個人としては、最も有用な情報なしで、生き延びる方法を検討するしかなさそうです。

おもいきって、在宅勤務が出来ない仕事ならやめる、という選択がある。

それじゃ餓死しちゃいます、という人もいるはずで、その場合は已むを得ないが、少しでも、細々とでも、カツカツでも、負け負けでも、生きて行かれる見通しがあるのなら、失業保険や生活保護をフルに動員して、特に大都市の人は「公共交通機関による通勤」という毎日打つ大博打みたいな行動を避けるべきであるとおもわれる。

自転車で通えれば、なんとか方策もありそうだけど。

昨日だか、ひさしぶりに日本語のニュースを読んでいたら、女の人が、いったん会社をやめたり、やめさせられたりすると、復職まで平均28ヶ月かかるそうで、仕事をしないで生活する目安は、2年半、ということでしょう。

2年半、という年月は、ちょうど日本でCOVID禍が落ち着くだろうと予測されている時間の幅ともあっていて、そのくらいドビンボに耐え抜けばいいわけだ、という考えでよさそうです。

いま、この記事を書くためにインターネット報道を読んでいたら、

「デルタ株、ワクチンの効果低い 重症化のリスク高米CDC」

という見出しで、

【ワシントン時事】米疾病対策センター(CDC)は6日、新型コロナウイルスのデルタ株がそれ以外の株と比べ、ワクチンによる感染防止の効果が低いことを示す調査結果を公表した。デルタ株は感染力が強いことが知られているが、感染後に重症化し死に至るリスクも高く、CDCはワクチンに加え「的を絞った追加的戦略」が必要だと提言している。

という記事を時事通信が配信しているが、元記事を見ると、

Vaccination Offers Higher Protection than Previous COVID-19 Infection

というタイトルの

 They prevent severe illness, hospitalization, and death. Additionally, even among the uncommon cases of COVID-19 among the fully or partially vaccinated vaccines make people more likely to have a milder and shorter illness compared to those who are unvaccinated. CDC continues to recommend everyone 12 and older get vaccinated against COVID-19.

と締めくくられた記事で、ワクチンは重症化を防ぐから、ちゃんと打ったほうがいいぞ、という記事です。

日本語報道が万事、記者が信じたい方向にねじ曲げられるのは、いつものことで、日本語で書かれた記事を信じるほうがナイーブだということになるのでしょうが、そういう議論は、いまさらやってみても仕方がない、現実に対して実効性があるほうに話をもっていくと、このCDCの「提言」の背景になっていて、日本語では存在しない概念に「long COVID」があります。

https://www.health.govt.nz/our-work/diseases-and-conditions/covid-19-novel-coronavirus/covid-19-health-advice-public/long-covid

日本政府は「自宅療養」という、もっともらしくすらない「自分の家で死んでね」政策を発表して、あんまりなので、英語世界でもおおきなニュースになっていたが、流石にこれには、いつもは「御上(おかみ)のなさることだから」で唯々諾々と従ってきた日本の人も、珍しくも怒りだして、「おれに、ひと目にたったり、ニュースで病院通路や通りで酸素吸入を受ける混乱画像が出ないように、ひとりでひっそり死ねというのか」と述べて反発しているが、自宅療養は、中国でやってみたら感染が返って拡大するのが判ったりしてコロナ禍の拡大にしかならないことが判っているのに加えて、long COVIDの多発につながると理解されている。

コロナに罹患しても、たいていは快癒するが、場合によっては進行して、肺がまっ白になって、残りの一生を、ただ平坦な道を歩くだけでぜいぜい言って暮らさなければならなかったり、体力が乏しいのが常態になって、集中力が著しく低下したり、確認されたわけではないとおもうが、複数の研究者たちは知力が低下する、とまで知見を述べている。

中等症の段階まで治療されないでほったらかしにされていると、このlong COVIDと名前が付いている不可逆的な健康状態の変化に陥ることによって、一生、苦しみのなかで過ごす事になる。

long COVIDを避けるための最善の途がワクチン接種で、日本語では、文化のどういう側面を反映しているのか、異様としか言いようがない、ワクチンの有効性への疑問や深刻な副作用の報道で溢れかえっているが、世界中の人間がみな愚かなバカ者ぞろいで、日本人だけが賢明だった、という可能性もないとはいえないけれども、わしなら、あらゆる機会を捉えて、ワクチン接種を受けようとするでしょう。

念の為に言うと、ワクチンが最も危険性の高い予防法であることはジェンナーの昔から、よく知られていたことで、ややこしいことを言えば、副作用のリスクと、免疫増大による致命的な発症回避のリスクを天秤にかけて、副作用のリスクは無視したほうがよい、という決定をすることで、ワクチンは接種する。

少なくとも、英語世界では、ワクチンが危険であることは誰でもが知っている既知の知識と言っていいとおもいます。

わし自身、普段は、例えば冬の恒例で「fluのワクチン接種無料だよおー。明日からavailableだぜ」というemailが来ても、ワクチンは、怖えからな、と述べて、受けにいきません。

ほんとは、めんどくさいだけなんじゃないの?という疑いの声は常に家中から聞こえてくるが。

ニュージーランドはワクチンはファイザー製だが、特に二度目の接種で、副作用があらわれて、腎臓に持病があるヨット友は、先週、会ったら、いやあ、次の日いちにち寝込んでしまって死ぬかとおもった、と述べていたりしたが、どちらかといえば「日常を生活するリスク」の範囲で、それを理由にワクチンは接種しない、という人には会ったことがない。

というわけで、コロナで死に至ることや、long COVIDで一生苦しむことを避けるために、ワクチンは接種したほうがいいみたい、というだけのことを書くのに、本来はツイッタくらいですませるべき話を、記事にしてみたのでした。

あれだけの研究エネルギーと莫大な予算を傾けても、未だに解決しないままで、なんとか折り合いをつける方向にすすんだAIDSよりも、さらに根絶が困難なコロナウイルスは、

COVID-19パンデミックを引き起こしたSARS-Cov-2が中国の研究所でつくられた人工的な生物兵器だなどと非科学的な主張はいっさい受け入れられるべきでない」と主唱して、典型的な陰謀説だと述べて、市場の野生動物からヒトに感染が起きたのだという主潮をつくった英国出身科学者ピーター・ダザックの数々の嘘がばれて、どうやら内緒の中国政府の傀儡科学者と憶測されて、情報機関が証拠を収集することによって、中国政府のあの手この手の隠蔽努力にも関わらず、再び「中国武漢研究所起源説」が主流になってきているが、いつものこと、個人から見れば、眼の前にあるウイルスの脅威だけが問題で、由来やウイルス発生の真相は、生き延びて、生活が立て直された、その後に考えることにしかすぎない。

やや乱暴な言い方をすれば、生き延びていくことが大切で、残りは、どうでもいいことです。

あと2年を死なないで過ごす。

long COVIDに陥ることを、なんとしてでも防ぐ。

このふたつに集中して、他のことは、どんなに惜しくても、悔しくても、ばっさり切り捨てて、諦めるほかはない。

ひとりではないことを忘れないで。

死なないで



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21 replies

  1. ありがとうございます。
    確かに屁理屈合戦(笑)大好きです
    私は、先生二人にワクチン打たない方がいいと言われて、そういう病気ですが、それがなければ打っています。
    最悪仕事をやめる、決断はあると思いましいた。そういう看護師さんは多かったのではないでしょうか。みんな自分の命が大切で優先でいいですよね。動物が自然がお手本です。

  2. 私もコロナのワクチン接種はしたくないなぁ・・・とずっと考えていたけど、ここに来て「やっぱり接種した方がいいかもな」くらいに思えてきて、ちょうど地元自治体でもわしら世代が予約を取れるようになったので一応2回分の予約をしてみました。ファイザーです。
    と言っても1回目が来月下旬なので、それまでじっくり状況を観察しつつ最終判断をします。

    • わしも初期にはCOVIDのワクチンなんて打つのやだ、チューシャ嫌いだし、とか言ってたんだけど、コロナの凶悪さの度合いが判ってきて接種することにした。「好き嫌い言うてる場合ちゃうやん」になったのね。怖いですね。チョー怖い

      • 重症化よりもlong COVIDの方が日常生活への影響として甚大であるように思います。

  3. ありがと。
    こちとら電車に乗って人の集まるところに出勤したくなく仕事クビになったら
    国の支援金もはねられて仰々しくも封書が送りつけられたり今月の支払いについても白髪増えそうなほど困窮している、
    が、生きている。

    ワクチンも打った。残念ながらまだ副作用としてのグラマーさんにはなれておりません。残念…

    さっさと家出の資金を貯めたいが家から出たくないし、あ、そういや髪を青くしたのであったはっはっは。

    でも、生きるよ。

    • ナナゼロ、今回はタイミング悪かったもんなあ。踏切りボードで、いざ跳躍して飛び込み、というところでCOVID。ま、調子悪いときもあるさ。天気と運気は年中変わる。焦ることはないよね

      • そうなんだよおおおーー😭😭😭。ありがとう。ガメさんから貰ったアドバイスをデバイスに保存しお守りにして旅立っている予定であった。
        何ならカナダの友達がひと足先にNZについていて、そのうち、というところだった。

        ありがとう。凪を待ちます。

  4. 私も、ワクチンは疑問だと忌避してましたが、デルタの猛威と日本政府の体たらくを見て怖くなりました。明後日自衛隊の大規模接種会場で1回目のモデルナを接種します。日本はワクチンの供給すらどうなるか分からず、下手をしたら希望しても接種出来ない状況になる様な気がします。PCR検査も自費で受けてきました。会社は当面在宅ワーク、どうしても出社する時はマイカーで行く事にします。マスクはKF94を大量に買いました。

  5. えええ?

    PCR検査が有料なんですか?

    珍しいのではないかしら。

    なぜだろう?

    • 日本は発熱してコロナ感染が疑われる人にだけ国費負担がありますが、それでも2,000円くらいかかるそうです。自覚症状はないが念のため検査の人は、皆もっと掛かります。私はネットで陰性証明書を出してくれる検査機関を探して一番安そうな所で9,900円でした。唾液を自分で検査する簡易キットでも3,000円くらいです。一番酷い話しは、発病して回復した後に検査したら28,000円も取られたと聞きました。私の受けた検査は、もし陽性だったら見舞金30,000円。回復後の監査無料チケットが一回分付くという『特典』付きでした。

      • 即日判明のPCRは30000円、2.3日後にお知らせなら6000円です。密な検査場に出向いて、この価格です。

      • な、なんでやねん(-_-)

        「財政の一助」なんだろうか

        >即日判明のPCRは30000円、2.3日後にお知らせなら6000円です

  6. これ、支配者層の立場で考えるのが好きな日本人にしては、面白い反応ですね… 私は、てっきり「感染したら百人に一人が死ぬ疫病が流行ってる時に、一万人に一人のワクチンの副作用を政府が気にしてられるかよ!」と言うかと思ってました。 たぶん、日本人の間でワクチンなら批判して構わないという了解があるんでしょうね…
    >日本語では、文化のどういう側面を反映しているのか、異様としか言いようがない、ワクチンの有効性への疑問や深刻な副作用の報道で溢れかえっている

    • 書いてくれて、ありがとう。

      Long COVIDというのは知りませんでした。退院後でも肺の機能が悪くなっていくことがある、という記事はごく最近読みましたが、考える対象とするにはそのような言葉が欲しいですね。

      私はやっと1回目を受けたところです。
      mRNAの長期的な影響は気になりましたが、自分は40代なので、リスクとメリットの天秤は割と明確でした。

      ここに来て悩んでいるのが、10代の子供たちです。
      先が長いことや、成長期による影響の受けやすさなど、大人とは違うはずですが、材料が余りにも少ないのです。
      オッズの分からないギャンブルみたいな。
      まあ、知らんから自分の人生は自分で決めろ、ではあるのですが、ちょっと可哀想だなと。

      ガメさんのところはまだかなと思いますが、子供へのワクチンについて、どう考えてますか?
      またNZの人々は、どんな感じでしょうか。

  7. 望月が出てくるなんて。ここ2年は行けてないけど、毎年春には温泉に行ってました。

    村の奥の林道をさらに上がっていくと、キリリとした空気の渓流があるんです。ちっとも釣れないんですけど。

    古民家のちょっと変わった蕎麦屋とか、知ってますか。あれはそんなに古くないかもしれない。

    季節は忘れたけど、佐久の方で、朝、ずーっと川に沿って低い雲がくねっているのとか。

    ガメさんとニアミスしてたかも、と思うと嬉しいなぁ。

  8. 屁理屈合戦で思い出されるのは、1年ぐらい前に「PCR検査は意味がない。医療機関に負担をかけないように4日以上経過してから病院に行くべき。集団免疫を獲得するまで耐え抜く」と述べていた友人が、最近になって手のひらを返したように全く反対のことを述べるので、どうして考え方が変わったのかと聞いたら、「私の意見は最初から変わっていない。私の意見を誤読しているあなたが悪い」と返されたので、そのまま友人をやめることにした。コロナがなければ友人同士でいられたかもしれない

  9. コロナで仕事をやめるはありだと思います
    ただこの国では、生きられるのかどうか関わってくるのでまた違ったりしますね
    よくならなければ。

  10. long COVID だと思うけど1年でワクチン打ったらかなり運動できる感じになりました。ジョギングもできそう、しないけど。ウイルスかウイルスのかけらか自己抗体が原因かもしれないって研究者が言ってた気がする。肺が繊維化したら不可逆だろうし苦しいからみなさん感染しないでください。妊婦さんも入院できなくてかわいそう…

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