日本語へ、帰ってくる、いつも。
もちろん、それは、あなたがいたからだった。
ぼくは30代も後半になったのに、あいも変わらない不良で、
とんがって、twitterなんて3万人を越えるひとをブロックして、
耳を塞いでいる、
なにから?
あなたは訊くけど、きっと、現実の人間というものが嫌いなのでしょう。
コモ湖の湖畔をトレメッツォからレノンまで歩いている。
もう午前2時なのに。
教会堂の高いドアから光が洩れていて、
信仰心のないぼくは、あの教会の前の公園のベンチで顔を覆って泣いていた。
あなたの言葉が届かないところで、
日本語が到頭とどかなかった場所で、
ぼくは顔を覆って、激しく泣いていた
あなたは、いったい、どうしているのだろう?
あなたがきっと還ってくるとおもって、日本語の本の出版の話は、全部、断っちゃったよ。
でも、ぼくは、書いても書いても、あなたからの言葉が届かないところで、いったい、なにをやっているのか。
ポケットに手を突っ込んで、最後の20ドル札を握りしめている。
モニさんに会う前のぼくは、いつも尾羽打ちからして、同情して、自分の羽根の下で休ませてくれる女の人たちと一緒にいた。
チェルシーホテルで、
三つ目の詩を書きながら、
こんな人生なんて、あるものか、と自分を呪っていた。
ポケットに手を突っ込んで、最後の20ドル札を握りしめていて、
ぼくは、英語の世界を出て行こうと、(笑い噺だけど)「悲壮な」気持を固めていた。
ぼくは英語の世界を、一刻も信用したことがないんだよ。
自分の母語を信用できないものだから、
美しい人を見つけては、ペニスを、突っ込んでみたり、
やさしい腕をなでたりしながら、
放浪していた。
ぼくは自分という見知らぬ他人を愛せなかった。
ぼくは、世界を信用しなかった。
そうして、ぼくはメキシコを、ほっつき歩いて
日本語をつたって日本を、ほっつき歩いて、
どんな自分への期待も裏切って
雨に濡れて
驟雨に
魂まで、ぐっしょり濡れて
日本語の町へ、やってきた。
ぼくがそこで見たものは、文字通り、筆舌につくしがたい。
ぼくやきみには未見の町で
国で
人間のクズのようなひとびとや
人間の
やさしさが結晶しているようなひとたちにあった
低い空で
どこまでも低い空で
ぼくは、その国が、とても好きになって
あなたからのダイレクト·メッセージを受け取っている
言わなかったけど、
あなたが送ってくれたタージマハルで、おかあさまと一緒に写っている写真があったでしょう?
あの、同じベンチに座っている、2歳の自分がいる
なんということなのか
ぼくは自分という見知らぬ他人を愛せなかった。
ぼくは、世界を信用しなかった。
そうして、いまは、こんなところにいる。
この言語は神の絶対を前提としている言語の模倣だが、
神は、もう昏倒しているのさ
神がいない土地で、
きみとぼくは
途方に暮れる
いったい、どの言語で話せばいいの?
どんな身振りをすればいいのだろう?
笑うべきなのか
怒るべきなのか
それとも、おもいきり泣けばいいのか
Adieu, mon amour, s’en est fini de nous
Je vois ton regard vitreux de l’autre côté de la vitre
Adieu, mon amour, s’en est fini de nous
Tu vois mon regard vide de l’autre côté de la rive
Adieu, mon amour, s’en est fini de nous
Je vois ton regard vitreux de l’autre côté de la vitre
Adieu, mon amour, s’en est fini de nous
Tu vois mon regard vide de l’autre côté de la rive
もう神がいなくなってしまった世界で、神の存在を前提した言葉で話している、きみとぼくは、どこへ行くのだろう?
ぼくには、もう、なにも判らなくなってしまったんだよ。
ところで、いったい、ぼくには、人間の子の言葉を使う権利があるのか?
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日本語で?を?とにかく書いてくれてありがとうございます。本、買いました。じっくり読みます。