続ビンボ講座 その22 戦うビンボ男

 

 

知るかよ。

なにがって?

まあーた、あの夢に出てくるテキトーなイギリス人だかニュージーランド人なんだか、

いつもニヤニヤしている野郎が、おためごかしに、ビンボ講座だとかなんとか、いつの時代の日本語なんだか、訳わかんねー日本語で、ビンボ対策を書いて、ビンボなわたしに寄り添ってくだすってありがとうございます、とかなんとか言われてんだろう?

おまえらは、アホか。

「寄り添う」ことと「すり寄る」ことの違いもわからねーのか。

そんなことだから、国民の皆様に寄り添って、とかなんとかうまいこと言われちゃって、政府にすり寄られて、財布の中身を抜きとられんだよ。

え?

あんた、誰って?

おれみたいな有名人を知らないなんて、もぐりなんじゃねーのか。

カメオだよ、カメオ。

ああ、カメオ出演の方ですか、とか、ゆってんじゃねーよ。

おれだよ、おれ。

大庭亀夫。

夢に出てきては、おれの神経を逆なでする、にやけイギリス人の野郎が、ジェームス、なんちゃったので、

この世に戻るチャンスが少なくなったけど、おれはな、

こーゆーものです。

どうぞ、よろしく。

https://james1983.com/2021/08/19/gameover/

相変わらず腕貫きして、あの会社に勤めてるのかって?

勤めてねーよ。

あの晩、おれは残業で、統計を誤魔化したのがバレたとかで、

泣きながら改竄を改竄バックして、違う数字にして、エクセルを見つめる眼をショボショボさせていたら、虚しくて虚しくて、泣きたくなって、

チクショー、なんでこれがおれの人生なんだよ、ふざけんじゃねえよ。

世が世であれば、早苗ちゃんと結婚して、幸せな家庭をつくって、

一男一女で、ホンダの軽自動車で、家族で美ヶ原!なんちて、テレビコマーシャルそっくりの幸福にひたれたはずなのに、なんでいいとしこいて、

昼間は若い女の同僚に、ヒソヒソされながら、こんなことまでやらされなきゃなんねえんだよ。

日本だぞ、日本!

ここは日本で、日の本の国ではな、神武天皇の昔から、男が偉いと決まってんだよ。

性差別なんかじゃねーよ。

伝統っちゅうもんだろが。

女は内、男は外

今宵は節分の豆まきか。

差別かどうかは、差別される側がどう考えるかで決まるんです、って?

なに言ってんだよ。

伝統を理解できんやつだな、おまえ。

だいたい、男と女が同じ人間なわけねーだろ。

チン〇ン付いてんのか。

どうしても同じ人間だって、言いたいなら、じゃ、なんで女の関取はいねえんだよ。

オリンピックで、男と女が分れてるのは、なぜだ。

ジャボチンスキーがシナをつくってカウンターの奥から出てきたら、どうすんだ。

そういう話じゃないだろうって?

あっ!

おまえ、フェミニストだろう。

こんにち、フェミニストという怪物が世界を歩きまわっている、

と同志レーニンも仰っておられる。

それ、共産党宣言で、レーニンじゃないって?

知るかよ、そんなこと、おまえ、そんな細かい事ばっかり言ってるから女になめられるんだよ。

おれも、ねーちゃんになめられるのは好きだが、そういう問題ではないだろう。

おれはな、流行りで、ネット上では哲学者と名乗ってるが、

名は体をつくる、いまじゃ一冊もまともな本は読まないのに、哲学が判るようになっちまってな。

デスクを離れて、腕抜きを外して、哲学的なものおもいに耽りながら、暗い廊下をトイレめざして歩いていたら、さ、早苗ちゃんが向こうからやってきた。

神様の思し召しだろう、ふつう? そういう偶然って。

他に考えようがあるか。

次の瞬間、おれは、早苗ちゃんを、この胸に抱きしめていた。

というか、早苗ちゃんのほうが背が高いので、胸に顔をうずめたみたいになってしまったが。

感動的なシーン。

Somewhere in Timeのミス·マケナがリチャードを見つけて階段を駆け上って、かき抱く場面のようだった。

ところが。

あの夢に出てくる、ふざけたイギリス人の野郎の口調をまねれば、

ところが

ところーが

早苗ちゃん、恥ずかしかったのか、おれをどついて、走っていってしまった。

おれは廊下にひっくり返って、裏返しにされた亀みたいに手足をひくひくさせながら、

蛍光灯に照らされた天井を見上げて、でも、至福の感覚を味わっていたんだよ。

到頭、早苗ちゃんに、おれのおもいは伝わったわけだからな。

おれには100%の確信がある。

早苗ちゃんが次の週にやったことは、職場のフェミニストどもの陰謀だった。

かわいそうに、早苗ちゃん、職場の女どものハラスメントにあうのが怖くて、おれへの愛よりも同僚への忖度に走ったんだよ。

スーザン·ソンタクとか、ダジャレ言ってる場合じゃ、ねーんだよ。

おれは職場の掲示板の地獄の業火に炙られ、宗教審問に引き出され、

職場のフェミニストどもに公開書簡で問い詰められ、

…. クビになっちまった。

あのときの人事課長のクソ顔ったら、ねえよ。

おなじ男なんだから、フェミニストどもの陰謀に負けました、またほとぼりが冷めたら再雇用するから、ここはひとつこらえてくれ、と頭を下げてくるかとおもったら、

きみが、こんな男だとは知らなかった、だとよ

犯罪者扱いだよ!

お若いの、よくおぼえておくんだぞ。

フェミニストってのは、女だけじゃないんだ。

男のなかにも、こっそり混じって活動してんだよ。

なんのために、だって?

モテるために決まってるだろうが。

最近はな、マジでフェミニストじゃねーと、女にもてねえんだよ。

クビになったおれは、アカウント停止に怯えながらアマゾンの配達をしたり、いくらなんでも、あれはしんどいので三日でやめたが、自転車でUber Eatsをやってみたりしたが、

あれもきっと、やっぱり、フェミニストたちが裏で陰謀を策動して、おれを見えないところで陥れていたに違いない、どれも長続きしなかった。

切ない。

切なすぎて、涙が出るぜ。

おれはな、到頭、50歳になっちまった。

このあいだ、最近ねぐらに使ってるネット喫茶で、ひさしぶりにジェームスの野郎のブログを見ていたら、ツイッタまでやっていやがって、

これみよがしに自分のヨットから撮った海の写真や、

新しいドローンをみせつけたかったに違いない、

ヨットから飛ばしたドローンで撮った島の写真!まで、載せていやがった。

労働もしないで、コンジョナシの癖に、遊んでばかりいて、オカネがドサドサ、金沢の雪みたいに空から落ちてくるやつもいれば、おれみたいに、生き延びるために必死で働いているのに、いつもいつもフェミニスト団の見えない陰謀で、生きることを妨害されている人間もいる。

ストレス解消で出かけた居酒屋で、隣に座った若い男が年金庁のやつで、おれは前々から、たしかなところを知りたかったので、「あのう、年金は大丈夫ですよね?」と聞いたら、こいつもフェミニスト団の一味だったのかも知れない、「出るわけないじゃないですか。太鼓判を押します。出す方が言うんだから間違いない」と笑いながら言いやがった。

冗談じゃねえぞ。

おれは月12万円の年金で豪遊する夢だけで生きてるのに。

50歳になると、仕事もねえんだ。

ハローだかバイバイだかの名前がついた、政府の人材紹介所にでかけたら、

仕事を選ばなければ、まだまだ職業はありますよ、と言われるが、

日本には履歴書とかいうクソみたいなものがあって、

そこに、正直者のおれがセクハラによる懲戒免職と書き込むと、

どいつもこいつも、おなじ男の癖に裏切りやがって、

これでは、ちょっと難しいですねえ、と腕を組んで眉根をひそめやがる。

おまえら、世界をわかってないんだよ!

哲学が間違ってるだろうが

紙ナプキンを、摑めるだけ、鷲摑みにして、おれはネットカフェを出て、

冬の冷たい雨が降る通りへ出ていった。

よく見ると、酒とセックスとファーストフードしかないサインがまぶしくて、それが、歩いているうちにつながって、色が色々とかダジャレを言ってる場合じゃねえんだよ、ひとつながりになっていく。

知ってるか?

人間はな。

雨にずぶ濡れになることを、ありがたいと思うことがあるんだよ。

おれが泣いているのが、誰にもわかりゃしねえからな。

むかしむかし、まるでおれの理想の人生をあらかじめ描いたような、

時計仕掛けのオレンジって映画を、新宿の、いまはヘンテコリンなビルになっちまった映画館の「スタンリー·キューブリック3本立て」で観たことがある。

残りの2本は「2005年宇宙の旅」と、もう一個は、クソ映画で、えーと、

「バリー・ロンドン」だったかな?

ともかく、

そのなかで「ホーム….ホームホーム」と呟きながら、主人公が歩いていくシーンを、なんでか、いつまでもおぼえていて、特にこのごろは、よく思い出す。

おれには、もう家もなくて、財布のなかに残っているカネもない。

クレジットカード?

そんなもの、持ってるわけねーだろ。

どうすればいいんだよ。

いったい、どうやって生きていけばいいって言うんだよ。

生活保護も、やたら偉そうな役人に、ああだこうだ難癖つけられて、断られて、二回目に、やっぱりなんとかしてくださいと言おうとおもって、勇気をふるって出かけていったら、ふざけやがって、窓口を掲示板で隠してあった!

おれはな、生まれてから、なんにも悪いことはやってないんだ。

世界観の相違から懲戒免職になっただけだ。

それなのに、どうして、こうなるんだよ。

アムスラーチャートって、知ってるか?

おお。おまえ、ちょっとは学があるな。

ネットカフェでたまたま見かけて、片眼ずつ、遊びのつもりで試してみたら、左眼で見た格子が歪んでいる。

国民保険もつくってなくて、ありったけのカネをつぎこんで、医者に行ってみたら、目ん玉医者が「黄斑症」だとかなんとか、漢字がおおすぎて憶えられない名前を口にして、内科にも行けと言われた。

そこで血液検査まで受けさせられて、宣告されたのは、2型だとかなんとかの糖尿病で、食うや食わずなんだから、そんなわけないだろうと、けったくそ悪い、見るからに育ちがよさそうな女の医者に食ってかかって、自分でも後で反省したが、少し大きい声をだしてすごんでみたりもしたが、こいつもフェミニスト団の一味だったのに違いない、小動もしないで、嫌らしいニヤニヤ笑いを浮かべて、

「気の毒ですけど、間違いありません。黄斑症もそのせいです。あなた、いいですか?

緑黄野菜をたくさん採って、加工食品は避けないとダメですよ。いままで見たいな食生活を送っていると、失明しますよ」と嫌がらせを口にしやがった。

おれが野菜なんか高くて手が出なくて、已むを得ないからカップラーメンばかり食っているのを、ほかのフェミニスト団の報告で知っていて、嫌味を言って楽しんでいるんだろう。

どうすればいい。

どうすればいいのか。

おれは、もう若くない。

誰も助けてくれない。

すっかり希望を失って、雨が降る夜空に向かって叫んでも、

誰も答えてはくれなくて、気味悪そうな顔をした隠れフェミニスト団のやつらが、傘のはしから、ちらちらとおれを眺めている。

もう、おれは疲れたよ。

これ以上歩けないよ。

仕事があったって、もう、仕事をする気力も残ってないんだよ。

どうして判ってくれないのか。

助けてくれ。

誰か、助けてくれ。

まさか人には言えないし、言う相手も、もうおれには誰もいない。

人間の世界から、少しでも遠のくために、おれは歩いているのに、日本の町は、癌細胞のように増殖して町と町が癒着してるものだから、どこまで行っても町で、人間が犇めいていて、そいつらがみんなおれを嗤っている。

そうだ。

海へ行こう。

南へ歩いていけば、海があるはずだよな。

二キロから三キロか。

海へ行けば、そこには、暗い、莫大な量の水があって、静まり返っていて、

おれを静かに受け止めてくれるだろう。

おれが抱きしめても、早苗ちゃんみたいに、訴えたりしない。

海へ行こう。波に向かって歩こう。

それがおれにとっては苦しみの終わりなんだ。

もう誰も、おれを嗤わない。

そして、おれは、静かな時間のなかで、おれの雄々しい戦いの人生を終える。

人生の最後の瞬間には、世にも美しい光の柱がおりてきて、自分を包んでくれる、という話が、ほんとうなのを祈ってるよ。

じゃあな。



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