雨ばかり降っている

異常気象なんだってさ

クラシックヨットのひとつを見に行ったら黒いカビが天井いっぱいについていた。

古い古典ヨットは、マホガニーを張り詰めて、優雅で、

いまできのヨットなど足下にも及ばないが

メンテナンスは、何倍も労力がかかる。

今年は、嫌な年だなあ、とおもいながら

プーチンのロシアがウクライナに攻め込んだニュースを見る

習近平の中国が、台湾への武力侵攻を誓う記事を見る

この世界では現実ほど現実感がないものはない

誰か、嘘をついてくれないか

結局、なにも起こりはしないのだと

杞の人が恐れたようには、青空は割れたりはしないのだと

もう、なんだか、嫌になって、

ぼくは

ヨットの世話をやめて

浮桟橋をわたって

トヨタのSUVにもどって

運転席で

顔をおおって泣くだろう

なんのために?

誰のために?

泣く事に理由などいるものか

世界が壊れてゆく

世界が壊れてゆく

兵士達は世界のあらゆるところで死ぬ

ウクライナで

欧州の山で

欧州の海辺で

極東の島々で

至る所で自由は敗れて

兵士達は死ぬだろう

昨日

塹壕のなかで花を編んで笑いあった女の兵士達は

花で編んだネックレスを首のまわりに飾ったまま死ぬだろう

子供達は死ぬだろう

地下室の崩れた壁の下で

ぬいぐるみを抱きしめて

男達は死ぬだろう

恋人の無事を願いながら

あらゆる場所で

希望は死ぬだろう

どんな光も見逃さずに

ぼくには 有効な言葉が残っているのだろうか

とても異様なことを述べてみればどうか

ぼくはヨットの黒いカビを拭ったあとで

Vバースに顔を突っ込んで

午後のあいだじゅう 泣いていた

なぜ?

ぼくは海へ出ていけるが

世界から出ていくわけにはいかない

もう、どうだっていいのさ

世界になど 興味ない

だってバカばかりじゃないか

正義で頭が狂ったバカばかり

なぜ、ぼくがきみの心配をしなければいけないのか

なぜ、ぼくはいつもきみの朝の心配をしてばかりいるのか

なぜ、ぼくはきみと共にあるのか

うんざりなのに

きみは知らないが

どれほど、きみのことを心配したことだろう!

海でいきのびていくには

GPSが必要で

オートパイロットが必要で

レーダーも備わっていて

航海灯をつけて

海面を滑って

明日へ向かって航海する

誰か、嘘をついてくれないか

結局、なにも起こりはしないのだと

杞の人が恐れたようには、青空は割れたりはしないのだと

夜更けの三角波の向こうで

海神がたちあがり

なにごとかを叫んでいるが

ぼくの耳には、もうなにも聞こえない

ぼくは知っているのさ

このまま航海をつづければ

世界の終わりにたどりつく

すべての恋が滝になって流れ落ちる淵にいたる

すべての愛情が滝になって流れ落ちる淵にいたる

流星も水の表面に映る

流星も水の表面に映る

あと、どのくらい遠くまで人間は行けるというのだろう?

誰か、ぼくらのために巧みな嘘をついてくれないか?

世界には、まだ希望があるのだと



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1 reply

  1. 褒めてるつもりで言うけど

    歌が聴こえた。
    歌みたいだった。
    歌詞みたい、が正しいのか。
    音楽を伴った言葉だった。

    子供の頃に読んだ、グリム童話に
    出て来る、鈍色の海が見えた。

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