君に夢中

七歳で、ぼくは葉山の海岸に立っている。

(鐙摺山の後ろには積乱雲)

(海の匂い)

すごい国に来たんだよ。

海の水が温かい国。

階級がない国。

その強烈な記憶。

関わりが出来て

言語をおぼえて

ぼくは、また、その国に帰っていった。

18歳だったかな?

北海から南極海の国へ

帰る度に、寄っていた。

ぼくは、なんだかヘンテコリンな その国が好きだった。

ニホン

ニッポン

色が濃い常緑樹が広がっていて

暗い緑

いったい、空からの、あの眺めを何回見ただろう

ぼくは帰ってくる

知っていたかい?

ぼくは帰ってくる

ぼくは帰ってくる

いつも

ぼくはずっと愛していたんだよ

自分が生まれた国よりも

育った国よりも

初めのころは、いったい何を話しているのかも理解できなかった国

(ぼくは二次元絵が嫌いでたまらなかったんだよ)

(どうして街の、生活のあちこちに、気持ち悪い性的な幼女絵があるの?)

メキシコの小さな田舎町で

貧民街で

人相の悪い

若い男の人が

タイヤに向かって、なんだか一心に鑿をふるっている

花を彫っている!

いったい、きみは、なにをやっているの?

とバカな質問を述べたら、

睨み付けるような顔で

ぼくは永遠を彫っているのさ

この世界には永遠は、ないからね

日本のひとたちは、あのメキシコの、若い人に、とても似ている

なんだか夢中で描いてしまうのね

多く、ぼくの趣味とはあわなくて、

ぼくの命名によれば

「デカ目デカ胸ミニスカ」で、まるで性欲を具現化したみたい

趣味が悪いんじゃないの?

そんなものを描こうとするのは、それ自体、どうかとおもう。

ほら、案の定、

「正しいひとたち」がやってきて、

きみたちは幼女性愛や、公共の良俗を乱していることや、

だいいち、いったいなにを考えているの!

と、指弾されているでしょう?

犯罪的な

どこまでも犯罪的な

ぼくがきみの絵を好きになることは、一生ないだろう

七歳で、ぼくは葉山の海岸に立っている。

(鐙摺山の後ろには積乱雲)

(海の匂い)

すごい国に来たんだよ。

海の水が温かい国。

階級がない国。

その強烈な記憶。

「デカ目デカ胸ミニスカ」で、まるで性欲を具現化したみたい

ぼくは、唐突にきみの衝動を理解するだろう

(理解したくなかったんだけど)

きみは古タイヤに向かって一心に鑿をふるっていたんだね

なにかをつくりたかった

なにかをつくりたかった

絵描き達は、きみの下手っぴな線を笑うだろう

絵描き達は、きみの凡庸な線を笑うだろう

でも、ぼくは、判ってしまったのね

驚くべし、

美神は、きみの側にある

「正しい人たち」がやってきて、

きみの間違いを嗤うだろう

日本語では「表自戦士」って、言葉があるんだって

「表現の自由」と述べるのに値しない表現

きみの、変わり映えのしない退屈な

「デカ目デカ胸ミニスカ」

なんの才能もない

なんの新しいこともない

いつものムスメ

ぼくは永遠を彫っているのさ

この世界には永遠は、ないからね

デカ目デカ胸ミニスカ

もうちょっと趣味がいい絵を描けばどうなのか

きみが進境するまで

必ず、ぼくは、ここに立っていて

デカ目も

デカ胸も

ミニスカも

守り通すから

約束するから

18歳だったかな?

北海から南極海の国へ

帰る度に、寄っていた。

ぼくは、なんだかヘンテコリンな その国が好きだった。

ニホン

ニッポン

ぼくが、いまも、夢中の国



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